CTOA Advent Calendar 13日目の記事です。この記事では、約5年間Web開発会社のCEO(経営責任者)を務めながら、別のHRTech系事業会社のCTO(技術責任者)を務めている私が、CEOとCTOを兼業するに至った経緯や、その過程において発生し(た|ている)葛藤について、つれづれなるままにお話します。

どうしてCEO/CTOを兼業するに至ったか

2013年から2016年まで教育系スタートアップでCTOを務めていた私は、2016年に同社を退職、CTOを退任した後、開発会社をつくり、代表となりました。この会社は、現在は社員10名以下の小さな開発会社です。UX/UIデザイナーと、Webエンジニアで集まってクライアントワークをやったり、最近は自社アプリをつくったりしています。この会社を始めた経緯については、私が過去に書いた記事をご参考ください。

さて、話は、その開発会社創業時の2016年までさかのぼります。開発会社を始めて間もなく、自分のプロダクトを持ちたくなった私は、ちまちまとWebサービスを仕込み始めました(普段から幾つもつくっていたので、これ自体はさほど目新しいことではありませんでした)。そのひとつが、HRTech領域のSaaSです。以前からお付き合いがあったAさん(仮名)と久々に再会した折に事業アイデアのディスカッションで盛り上がり、どうせこれも個人サービスのようなものだと、クライアントワークのスキマ時間を利用してサービスを立ち上げました。

ところが嬉しいことに、このプロダクトが思っていたよりも早くに複数の企業ユーザーにトライアルで使っていただけるようになったため、2017年の中頃よりプロダクトの運営母体をどうするかという問題に行き当たりました。当初創業していた開発会社は、クライアントワークを生業にするつもりで創業し、メンバーもその思いに共感して集まり始めていたところでしたし、一方で、こちらの新しいHRTechなプロダクトもユーザーがつき始めていたとはいえメンバーを養っていけるほどにはビジネスができている状態ではありませんでした。

どちらをとるか、とても悩んだのですが、結果として両方をとることにしました。つまり、開発会社はそのままに、先に登場したAさんとHRTechプロダクトの運営母体となる事業会社を共同創業するという決断をしました。現在私は、そちらの事業会社のCTOを務めています。(以降、便宜上、開発会社/事業会社という書き分けをします。)

ある会社でCEOをやりながら別の会社でCTOをやるということについては、自分の「どっちもやりたいな」欲が出てしまったのでしょう。一方で、周りに多くのロールモデルの先輩方がいらっしゃったことも、この決断を後押ししていたと思います。折しも2016~2017年頃は、フリーランスのWebエンジニアや小規模な開発会社をやりながら、パートタイムCTO/レンタルCTO/技術顧問などの立ち回りでスタートアップを支援するような方もまわりに多く見られました(現在も、比較的目にするように思います)。自分のそのなかの一人なのかな、と思い、さほど重くも考えず、この二足のわらじ生活をスタートしてしまったという経緯があります。

自分自身のリソース配分がわからなくなる葛藤に向き合う

率直にいって、CEOとCTOの二足のわらじで仕事をしていくことは、相当に厳しいものです。

まず、単純にふたつの会社を掛け持ちしていることで、自身の思考時間は分断されます。どちらにとってもベストである選択をしようとしていたとしても、ひとつに集中していた時と比較すれば、判断材料収集も、決断のためにかけられるリソースも半分ずつになってしまいます。

開発会社の代表として、永続的な売上経路を確立していくことも、利益率を増大させていくためにクライアントワークの生産性を上げていくことも、目の前のクライアントワークを自身の目指す相応な品質でやりきることも、いずれも重要なミッションです。

一方で、事業会社のCTOとして、事業スピードを高めるために最適な技術選択をしていくことや、事業ステージを見据えた適切な開発体制を構築・維持していくことも重要なミッションです。創業まもないスタートアップのCTOですので、手を動かすべきシーンは多分にあるのですが、思考を切り替えるシーンが多ければ多いほど、コードに触れて試行錯誤する時間の確保は難しくなる。

それぞれが別の会社ですので、両社あわせて全体最適をつくるように動かすという話ではなく、それぞれの会社にとっての最適をつくっていきます。見るべき視野も思考の軸も異なってくるからこそ、切り替えのコストもかかる。時間をかければかけただけ、成果も自身の納得感も上がりそうなのですが、2つの立場であるからこそ、どうしても自分の限界を意識することになります。

少しずつ事業が進み、いままで経験したことのなかった判断の難しいシーンに直面するときなどは、「いまの兼業状態でなければ、もっと違った決断ができるのかもしれない。自分がもっと時間をかけて手を動かせば、より良い結果を得ることができるのかもしれない」という思いがアタマをかすめます。こういったジレンマを常に抱えながら何ヶ月も走り続けていると、「自分は、ある種の割り切りを許すような決断や行動をしてしまっているのかもしれない」「誰かに不誠実な状態にあるのかもしれない」「『やり切り』できていないのではないか」「早く他の誰かに役割を託すべきなのでは」そんな考えが頭の中を行き来します。自分自身のリソース配分は本当に正しい選択になっているのかがわからない。そんな中でも、慣れや惰性に流されることなく、そのときそのときでベストだと思える決断を重ねていくことが大事だと思ってやっています。

2つの立場であるからこそ、その違いに意識的になれる

とはいえ、大変なばかりではありません。CEOとCTOは立場こそ違えど、会社に対して経営的に関わるポジションです。2つの立場をもっているからこそ、そのポジションの意義と自分の立ち位置に意識的になれるというメリットもあるように思います。

開発会社は、短期的な事業効率を追求すれば、良くも悪くも案件を「こなす」思考になってしまいがちです。しかしながら、これからもずっとクライアントワークだけを生業にしていくとなれば、開発会社としての事業モデル構築により意識的にならねばなりませんし、一方で、「自分が仮にCEOではないCTOだとしたら、何を優先するだろうか」といった想像から、採用や技術投資の思考軸を切り替えることにも意識的になれます。

また、事業会社のCTOとして動くときは、技術のトップとしての職務にコミットしつつも、自身で会社を経営しているからこそ、より会社としての全体感をもった上で意思決定に関われるようになれる部分もあると思います。

二足のわらじは、チャレンジングではあるものの、短期間に得られる学びや気づきも多かったように思います。

ちなみに、CTOを務めることでCTO協会への関わりができ、このAdvent Calendarで複数の方が言及してこられているDX Criteriaのような取り組みをいち早く自身の開発会社に取り入れることができたことは、兼業生活の効果だったかもしれません。運用に乗っているというレベルではないですが、会社にかかわるメンバー全員で各種の評価項目を確認検討できたことは、意義のあるトライになったと思っています。

さいごに

現在も2つの会社でそれぞれのCEOとCTOを務めている私にとって、兼業生活は苦しく感じることもたびたびあります。ただし、どのような道を選ぼうとも、日々の思考と行動を紡いで、その選択の結果・決着をつくっていくのは自分自身です。私自身、今後もこのような在り方で働き続けていくのかはわかりません。しかし、いまの私にとって、どちらの生き方も、とても大切に思っていることは事実です。

それはさておき、技術者の働く環境は、ここ数年で少しずつ変化してきているように思いますが、私個人的には、世の中にはもっと技術者出身のCEOが増えていってほしいとも思っています。世の中でCTOという職についておられる方も含め、現在技術者として働いておられる方で、これから会社代表を志される方がいらっしゃったら(あるいはその逆のパターンの方でも)、心から応援したいと思っています。一緒にがんばっていきましょう。

この記事が同じようなキャリアを歩んでいる方、同じような決断を考えている方に、少しでも参考になることがあったなら嬉しく思います。

最後になりましたが、今回のこの記事を書くにあたって、同じようにCTO/CEOを兼業/兼任された経験のある、尊敬する先輩方に「これからCEOを目指す技術者の方へ」としてコメントをいただきました。メッセージをやり取りし、突然の不躾な依頼にも関わらず、丁寧にご対応いただいたことに感激しました。本当にありがとうございます。ご本人の許可をいただき、ここに紹介させていただきます。

CEOは頭の使い方が全く違うので、勉強することも多く、大変なこともありますが、エンジニア不足を解消する為にも、ぜひ起業して未来のエンジニアをいっぱいつくっていって欲しいです。- 菊本久寿さん

ここまでお読みくださりありがとうございました。
来る2021年が、皆さまにとって素敵な一年となりますように。


去る2017/7/25に, 株式会社スタートアップテクノロジー様において「若手エンジニアの育て方」というイベントが開催され, 弊社での取り組みを紹介する機会をいただきました. 「エンジニア育成の場づくりに関する進捗共有」と題して発表させていただいたので, そのときのスライドを公開します.

しかしながら, 事前の議論を重ねるなかで, 言葉の表現はともかく, 開催メンバの想いや営みは共通するところがあり, また, 私自身がどう考えているかは置いておいて, 私も先輩方に育てられてきたのだろうということを振り返ると, 各々の知見を共有して議論していくことは意義があると思えるようになりました.

ということで, あくまで弊社での事例ということで, 試行錯誤の状況を「進捗共有」として発表させていただくことにしました. 普段頭のなかで考えながらやっていることを, 改めて整理して伝える機会になったのは良かったな, と思います. 登壇者の方や参加者の方といろいろ意見交換できたのも, とても有意義でした.

20分ほどの発表時間にぎゅっと詰め込んで駆け足でお話しましたが, まだまだ伝えきれていないこともありますし, 弊社の取り組みも現在進行形で変化し続けています. また, こういった分野の話について, ご興味の方とディスカッションできると良いな, と思っています.

資料中で紹介している参考文献へのリンクは以下のとおりです(新書は、比較的読みやすいと思います). アフィリエイトID付きですが, もしよろしければこちらから購入いただけると, とても励みになります!

(2017/7/28追記) 主催のスタートアップテクノロジー様によるレポートが公開されましたので, よろしければこちらもご覧ください.


私が代表を務めている株式会社ビルディットでは, 創業から1年経ち, これまでに若干名の(学生アルバイトを含む)エンジニア業務未経験の方やエンジニア志望の方と, 開発のお仕事をご一緒させていただくことができました.

今日は, よく聞かれることとして「エンジニア業務経験の無い方と, どのようにお仕事をご一緒させていただくまでに至っているのか」, 初回コンタクトから入社までのプロセスについて書いてみようと思います. 夏休みも近づいてきましたし, 開発アルバイトを検討している学生さん方や, 受け入れ側の企業の方に参考になることがあれば嬉しいです.

ちなみに, 今回の記事は, 「現時点でなにをやっているか」程度の紹介に留めます. これらのプロセスは, 日々改善を繰り返していますし, 細かく理由や背景や意図を書き始めると分量が膨大になってしまうためです. もし「ここをもっと知りたい」「どうしてこういうことになっているのか」「なぜこのようなやり方に至ったのか」「入社した後, どうしているのか」などへのご興味が聞こえてくるようでしたら, またどこかの機会で書くかもしれません. ご了承ください.

なお, 「弊社がどのような会社で, どういった思想で働く場所を提供しているか」については, 他の記事(フリーランスエンジニアをやるのではなく, 開発会社をつくった理由)で書いておりますので, よろしければそちらもご覧いただければ幸いです.

初回コンタクト〜初回面談

初回コンタクトの経路はまちまちですが, 割合としては, 知人紹介経由が8割, 求人媒体経由が2割といったところです. このフェーズでは, そこそこ多くの方とご縁ができますので, せっかく興味を持っていただいた皆さんと時間的な制約からお会いできないのは心苦しいところです. そこで, 実際にお会いするまでに, こちらの環境やお互いの熱量がフィットするかどうかをざっくり見させてもらっています. 具体的にやっていることは以下のようなことです.

  • どのような働き方を希望しているのかを聞く(週何日何時間くらい, とか)
  • これまでのアウトプットを見せてもらう
  • アウトプットを見た上で, 率直な感想を告げる
  • 会ってみようかな!と思ったら, 深く考えずに会う
  • 会うまでに, 写真やアイコンやプロフィール, メッセージの間隔や言葉遣いなどから, どんな方かを想像する


昨年創業した開発会社である株式会社ビルディットが, この3月で1周年を迎えたため, オープンに事業報告会を開催してみました. やってみると, ご参加の方から予想以上にご好評をいただき, 自分としてもいろいろ得るものがあったので, 記念として, そのことについて書いておこうと思います.

なぜオープンにやったのか

事業報告会というと, どうも内輪ぽい話になりそうだし, オープンにやるというのは自分でもあまり聞いたことの無い試みだなと思ったので, 改めて「なぜオープンにやろうと思ったのか」を書いておきます. 今回, 事業報告会をオープンにやった理由は以下の2点です.

  • お世話になってきた取引先や, ご縁をつくっていただいた&仕事場所を提供いただいたスペースに, 御礼かねがね報告したいと思ったから
  • 近隣で, こういった経営状況や事業状況を共有する機会がほとんどないため, 自分がやってみることで, 誰かが続いてくれるんじゃないかと思ったから

こんな想いで開催したため, 告知自体はfacebookイベントでオープンに出しましたが, 基本は, お世話になった方々にお声がけしてご出席をお願いすることにしました. また, 弊社の場合, 電気通信大学/東京造形大学/東京工科大学など地域の大学に通う学生さんにも開発/デザイナーアルバイトで仕事に参加いただいているため, 彼らの活躍ぶりをご紹介したく, ご縁のあった地元の大学や高専の先生にもお声がけさせていただくことにしました.

どんなふうにやったのか


昨年の話になりますが, 12月に母校である沼津工業高等専門学校の就職懇親会なるイベント(授業?)にお招きいただき, これから進路決定を控えた3年生と4年生の学生さんたちへ, 仕事やキャリアに関するお話をする機会をいただきました. そのときの話を書きます. (高等専門学校(高専)に関する一般的な説明は割愛します. )

どういったお話をしようかととても悩みました.

せっかく話をしに行くのですから, 何らか有意義なものを持って帰ってほしいなとは思っていたのですが, 何か主題主張を設定すると, どうやっても説教臭くなってしまう懸念があります. 私の年齢は学生さんからすればダブルスコアに近いですし, これまでの生き方も時代もずいぶん違うのですから, 自分の解釈を伝えたところでそれが身になるとも限りませんし. …


前回は, 「手段を目的化するための開発会社」の主要機能の一つとして「腕を磨く機能」を実装している, という話を書きました. その続きです.

創業にあたって自社の事業モデルを考えていったとき, この「腕を磨く機能」だけを「持続可能な開発会社の機能」と呼ぶには, どこか違和感がありました. その違和感の理由を考えてみると, 「それって, わざわざ会社にしなくても良いんじゃない?」「そういうこと考えながら個人事業やってれば良いじゃん」という問いが, 自分の中に浮かんでくるのを感じました.

そこで, もう一段階踏み込み, 会社にする理由と意義を言語化し, 自分自身をドライブさせられるような絵を描こう, と考えました. 言い換えると, 「システム開発請負をやる」「自社サービスを収益化する」といった直接的な意義よりも, もっと広義の, “この会社が社会にもたらす役割は何なのか?” ということです.

考えてみてわかってきたのは, 「どうして会社をやりたいのか」を考えることはすなわち, 自分の中にある価値観や理想や行動指針と, 現実社会とのギャップを認識し, それを埋めようとする気持ちを確かめることだ, ということでした.

中途半端に年齢を重ねてしまい, 他人や社会に対する適度な無関心さと寛容さを持ってしまった自分にとって, これはなかなか難しいことでした. ただ, 創業にあたって, モヤモヤしていることは確かに心のなかにあったので, それは何なんだろうと考えていってみると「技術のブラックボックス化」「学校で学べる “基礎” と、社会で求められる “仕事” とのギャップ」「即物的(すぐに結果を求める/それが何の役に立つの?)な価値観」などのキーワードが浮かび上がってきました.

念のため書いておくのですが, 私は上記いずれのキーワードも否定しようとは思っていません(何しろ, 適度に寛容なのです).

では, 何が引っかかっているのか, というと, 「なんかよくわからん技術を, よくわからんままに扱って, 『もっと知りたい/深いところに行きたい』という気持ちに応えられないまま, なんとなく豊かになっていく社会」があるとしたら, それはツマランなぁ, ということです.

ここで思い出されたのが, 9年ほど前に, とあるブログで出会ったこの言葉です.

技術と思考を磨くことだけ怠らずにいれば、いつか世の中の変化と自分のモードがマッチする瞬間がやってくる。そのときまで、諦めず、ただ静かに歩めばいい。これは言うほど簡単ではない、チャレンジと呼ぶに値する生き方だ。

私は, この記事が大好きで, 今でもたまに読み返してしまうのですが, この言葉を思い出した瞬間, 私の中の価値観と, 創業の動機, それに会社に持たせたい機能が, 綺麗にハマっていくのを感じました.

社会がどれだけ急いでいても, まわりがどんなに煽ってきたとしても「諦めず, ただ静かに歩める」ハコ(場所)がなくてはいけない. 目指すべきは「 真摯に技術と向き合い, “つくって働くことが, 幸せだ” と思える技術者がいっぱい居られる社会」であり, そのために会社に持たせるべきもうひとつの機能は「志を立てる(思考を磨く)機会の提供」だ, と.

ここまで考えて, 会社の事業モデルを下図のようにまとめました.


「技術は手段だ」なんて言われることが多いような昨今ですが,

通信会社での技術営業, 開発会社でのプログラマ, フリーランスエンジニア, 開発会社経営, 事業会社CTOなどを経験してきて, 「やっぱり技術が好きだな」「手段を目的化したいな」と思うようになりました. 「そういうことができるハコをつくって, 思いっきりやりたいな」と思ったので, だったら開発会社がよろしかろう, と思い, そんなわけで, 今年の頭に改めて開発会社をつくりました.

ただ, 手段を目的化したとはいえ, 会社は会社. 会社である以上, 利益を出し続けなければいけません. 会社にどういう仕組みを仕込んでおくか, これによって, 会社の持続可能性が決まることになると思いました.

とくに, IaaSやSaaSのような, 技術のパッケージ化, コモディティ化が日進月歩で発達している今日ですので, 半端な受託開発をグリグリ回すだけの会社であれば, ジリ貧になることは避けられません.

そこで, 手段を目的として生き続けるのであれば, 手段を磨き続けられる環境を自分たちで持つのがよろしかろう, と思い, 自社サービスを持つことにしました。

ところで, 技術会社のよくあるアプローチは, 収益の柱として自社サービスを持ち, 自社サービス事業と開発事業で, 良い感じのポートフォリオをつくることです. 手堅いです. ちなみに, そんな自社サービスは「自分たちが使いたいと思える, 自分もユーザになれるサービス」であることが多く, 結果として, 開発者向けクリエイター向けのサービスをつくっている技術会社が多いように思います.

ただ, 私の場合, 創業時点で, これといって「いける!」あるいは「自分で使いたい!」と思える自社サービスのアイデアはありませんでした. それに, 自社サービスを抱えるとなると, その市場性はどうなんだ, 収益性成長性はどうだ, と, 考えることになり, 結果として「手段を目的化する」が実現できなくなってしまうのではないかという懸念がありました.

そこで, 「手段を目的化する」をもうちょっと掘り下げて, どういう「手段」に bet しようか, ということを考えることにしました. これは, なかなか難しい賭けなのですが, いろいろ調べたり考えたりした(というよりも半ば直観的に閃いてから, 因果関係を諸々整理した)結果, 「蓄積された(利用者行動などの)データから新しい価値を見出す」いわゆるデータアグリゲーションやデータマイニングに相当する分野であれば, しばらくは食っていけるのではないか, と判断しました. データの解析そのものはAIや機械学習といった分野が台頭してきてはいますが, 少なくとも当面は, 「そこに文脈や仮説/解決すべき課題/意図を設定し, 解析処理を走らせ, その結果をうまく活用する」というアクションを, 人間が実行することになるからです.

というわけで, 自社サービスをもつモチベーションを, 「収益の柱をつくる」のではなく, 「自分たちで運用し, 自由にデータを解析し, サービス改善までを回せる環境をもつ」というところに設定することにしました. こう設定することで「なんか, いろいろ利用データが溜まるサービスであればOK. いっぱいデータ流れるやつなら, なお良し」となり, 「どんなサービスを自社サービスにするか」という点での悩みが, ずいぶんと軽くなりました.

もちろん, ユーザに使ってもらう以上, 価値があるものでなければいけません. 結果として, いずれは収益性も考慮することになってくるでしょう. しかしながら, ユーザ価値を金銭的な収益に変換するハードルが高いことも事実. むしろ, 最初のモチベーションは「自分たちが技術を磨くための場所」くらいのスタンスで立ち上げておき, サービスが育って, 金銭的な収益化の目処と成長性の見込みがたつ, 踏み込むべきときにアクセルを踏み込めば良いのかな, と考えています.

自分たちで何やらサービスをやっている/運用している, 溜まったデータを活用し, 改善もいろいろ試行錯誤している, そうやって技術を磨き続けている開発会社であれば, お客様企業の開発を請け負うときにも, より高い付加価値を提供し続けていけるのではないか, というアイデアです.

このアイデアが正しいかどうかは, やってみないとわかりません. というわけで, いま, やってみています. 自社サービスは, 開発請負の傍ら, 5ヶ月ほどの開発期間を経て, なんとかプライベートベータ公開にまでこぎつけました. いろいろデータが溜まり始めています. リアルな実データを扱えるのは, なかなか楽しいです.

というわけで, 会社の主要機能のひとつに「腕(技術)を磨く機能」を設定し, これを「自社サービス開発/運用」と「受託開発」で支える, という構造をつくることにした, というお話を書きました. 会社の主要機能は, もうひとつあります. 別の記事として書きましたので, よろしければご覧ください.

Yosuke TOMITA

開発会社を経営しているプログラマ。育成や教育の在り方を、ソフトウェアの力でより良くしていくことに関心をもっています。

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